路面モジュールに手を出してみた。


 <その1>

"路モジ"への道

がさして、というべきか、『路面モジュール』に手を染めてしまった。
 ナゼ?それはもちろん、このレイアウトの形態が端的に言っておもしろそうだと思ったこともあるけれど、最大の魅力は“気軽に取っ掛かれて、場所を取らない”ことである。
 場所を取らない、といえば、少し前にKATOの『デスクトップレイアウト』が話題になったのは記憶に新しい。Nゲージとしてエンドレス+立体交叉+20m級車輛の走行を最小限のサイズで実現した、省スペースがウリの“半完成レイアウト”である。
 しかし、自分やいくばくかの知人の経験から鑑みるに、あのたかだか畳三分の一の面積に過ぎぬ大きさのモノが、自室の6畳間の真ん中に現れただけで途端に邪魔くさく感じるのはなぜだろう。そして少なからぬ部屋数を有する戸建て住宅においてさえ、家庭争議の火種になってしまったりするのはこれまたどういうわけか。
 つまるところ、模型の“地面”というのは、そこに存在するだけで天地方向に否応なしにデッドスペースが出現してしまう宿命を孕んでいる。そのことが、関心のない同居人にとってみればどうにもガマンならないのだろうと思う。
 むろん、収納や設置方法に工夫をすれば、ムダな空間をいくばくかは軽減できるが、抜本的な解決にはならないのが実情である。
 裏を返せば、恐らくわが国の一般家庭において、天地方向の空間を食いつぶす“無用の長物”が、同居人のコンセンサスを得る(わが国にレイアウトがなかなか普及しないのは、大半のモデラーがそれを面倒がるがゆえでもあると思われるのですが…俺もその一人なんだが^^;)ことなしに存在を許される面積は、いわゆる書類サイズが許容値なのではあるまいか。 その意味で、面積をズバリA4サイズに設定したあたりも、『路モジ』の妙味だと思う。
 話が逸れたが、帰りがほぼ毎日午前様というロクでもない仕事をしているがゆえ、模型を作ることも億劫になってしまい、ここ数年はNの本線モノやジャンク同然の16番車輛を買い漁り、仲間と運転会で走らせて楽しむことに血道を上げていた。だが、最近狭いアパートに引っ越したのをキッカケに、小型車やパイクの世界に回帰しようか…と思いつつあった矢先に目に入ったのが、この路面モジュールだったわけだ。
 その後、東急電車とバスの博物館(以下“電バス”と略)での運転会に参加しませんか?という誌上での呼びかけにもつられて、製作にはおのずと拍車がかかることになる。


■どんな情景をつくろうか

 路面モジュールというくらいだから、モチーフは基本的には路面電車である(当たり前だ)。で、そのテのものにかんしていえば、個人的には陽の当たる大通りのど真ん中を電車が悠々闊歩するのよりは、クソ狭い商店街に邪魔くさく割り込んでいたり、郊外の路肩を土ボコリを蹴立てつつ走っているような情景が好みだったりする。
 そうなると、ネックはレギュレーションが“複線”であることだった。もし単線なら迷わず福島交通とか石松電車とか美濃町線の世界にスッ跳んでいってしまうところなのだが、そうは問屋がおろさないわけで。
 せめて“未舗装”は実現したいよなあ、と思案するさなか、手許の雑誌に載っている、とある写真のことを思い出した。
 それは『鉄道ジャーナル』'79年10月号の、土佐電鉄を紹介した記事の中の一枚。国道らしき片側一車線舗装路の左側に併用軌道とも専用軌道ともつかぬ砂利敷の複線軌道があり、軌道の背後には土蔵を併せ持つ民家と鬱蒼とした竹林。そこをまた瀟洒な600形電車が走ってくるという構図だ。



▲『鉄道ジャーナル』'79年10月号書影と“問題の”記事。くわしく見たい人は古本をさがしてね。

 この本をたまたま買ってもらったガキの頃、この情景にはちょっとしたカルチャー・ショックを受けた覚えがある。
 それ以前に、路面電車を扱ったいくつかの書物に目を通していて、トカイのチンチン電車はスマートな電車が広い通りの真中を複線で走るもの・イナカのは未舗装道路の隅をズングリとした電車がコロガるもの…という固定観念が出来かけていた折のことでもあり、コドモ心にも何か吸い寄せられるようなものがあった。
 ひさしぶりにその記事にしげしげと見入ったあげく、我が路モジ第一作の題材はスンナリと決まったのだった。


■材料あつめ

 なにしろ路面モジュール委員会の皆さんが知恵を絞って決めて下すった規格があり、連載中にベースボード材料手配のためのアンチョコも載っていたのは有り難いことである。
 しかしながら、台枠関係の入手は意外とスンナリとはいかなかった。A4パネルこそ安易に近所の画材屋で買えたが、問題はその他の板材やイレクター(アジャスタ付脚の商品名)
である。路モジの連載では“ホームセンター”で調達せよと書かれているが、都心住まいで勤務先も含めた生活圏内には個人経営の荒物屋しか存在しない私にとっては単なる空念仏。いちおう延べ5〜6軒の荒物屋を当たってはみたが、案の定全て玉砕という結果に終わり、最後の手段・渋谷or池袋の『東急ハンズ』に行かざるを得なくなったのは何ともユーウツだった。
 ゼイタクな悩みだと言われてしまえばそれまでだが、駅から中途半端に遠く、人混みにもまれるうえ、店内に一歩踏み込んだら最後、あらぬ物欲を刺激されて、木っ端一枚とかネジ一本だけのはずがよけいな散財を余儀なくされるアノ“魔窟”には、できることならセワになりたくなかった(笑)のですよ…。
 結局シブシブ池袋のハンズに足を運ぶことになったが、そこではイレクターという商品は扱っておらず、そのかわり『スペーシア』という某東武電車みたいな名前のものを売っていたので、当然今回はそれをアジャスタに利用している。
 しかし、困ったことにパイプのカットをしてもらう寸法を間違えてしまい、家に帰ってから金ノコ片手に悪戦苦闘するハメに(なかなか切れないんですよね、あのパイプ)。さらには、後日RMM誌68号掲載の市田哲也さんの作品を誌上で拝見してますます鬱になる。「単なるボルト&ナットだったら、近所の荒物屋で買えたじゃねえか!」…と。


▲ハンズで買ってきたアジャスタ付脚、その名も『スペーシア』(藁

 台枠のハナシが長くなったが、あとは地面関係だ。幸い草木の材料は死ぬほど?ストックがあるので、新規購入したのはストラクチャーと一部のアクセサリー類のみで済んだ。
 プロトタイプにもある入母屋の民家と土蔵は、安易に?GMの塗装済キットを利用している。以前は見向きもしなかったアイテムだが、工期短縮の意味もあっていざ入手してみると、塗装の仕上がりも落ち着いていてなかなか好感が持てた。細部の色差しや看板の貼り方などで充分カスタマイズの余地はあるから、塗装が億劫な向きにはダマされたと思って利用されることをお勧めする。


■シーナリーの設計

 …とはいってみたものの、じつは完全な行き当たりバッタリ・現物合わせの産物である。
 いつもなら、レイアウトの製作を考えるとなるとお決まりの設定地獄に陥るのだが、路モジの場合はイザ運転会となればどんな車輛が走ってくるかわからない(!)という特徴があるので、今回はインスパイアされたRJ誌の写真のイメージを凝縮することに専念した。
 いわゆる郊外電車ムードの情景なので、車輛的には岐阜の510や土佐電の600あたりを置いてハマればよしとし、このモジュール独自の車輛というのは特に用意していない(いずれは用意してみたいが今回は用意するヒマがなかっただけ、ともいうが)。
 利用した製品の都合もあるが、入母屋造りの家はヨロズ屋的な商店という設定にし、その目の前には電停…といっても、例えば岐阜の市内線のような、ヨソ者にはどこが電停なのかサッパリわからない(笑)手合いのものを設けることにする。
 組み上げて線路を敷いた台枠の上に、組むだけ組んだ入母屋商店と土蔵をブン投げて、ああでもないこうでもないと並べ替えているうちに配置は決定。あとからメモ用紙の切れ端にイメージスケッチというには程遠いラクガキをやっつけつつ細部の配置を煮詰めた。
 じっさいの工作のようすは、次頁に用意した写真をごらんいただくとしよう。 



 
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