工 作 局

HOナロー
コ型ピン式カプラーの処方箋



わが国のHOナローモデルのカプラーで、おそらくもっともポピュラーなのは、かつての乗工社製品に端を発する、朝顔型のカプラーをコ型のピンで繋ぐ方式でしょう。
 朝顔型を実物同様、本格的に?ピン&リンクで連結/解結するのは非常に面倒であることから、このような妥協策が出てきたのだと思います。しかし、ピンの抜き差しという作業があることに変わりはなく、ケーディーやアーノルドのような、車輛を線路に置いて押し当てるだけで自動連結できるカプラーに比べるとじつに不便です。そしてなにより、ピンが車輛本体とはまったく別のパーツであることが最大の問題といえましょう。紛失することも多いし、推進運転させれば脱線しやすいし、さらに脱線・分離時の復旧も厄介ときたものです。
 私の場合は、そういったデメリットに業を煮やしたあげく、ずいぶん前に手持ちのナロー車輛のほとんどをケーディーに換装してしまったのでした。

 しかし、ここへきてそうも言ってられなくなりました。じつは縁あって木曽モジュール倶楽部に参加することになったからです。
 木曽森林鉄道の車輛は、かつては乗工社、そして今はモデルワーゲンから盛んに製品化されていますが、ケーディー原理主義(?)の人間にとっては大きな障壁があります。
 トレーラーの主力を占める運材台車の製品が、最初からケーディーを取り付けられる構造にはなっていないことなのです。ゆえに、かりに換装するとなれば大シゴトですし、必要な輛数の多さを考えるとコストパフォーマンス面もよろしくありません。
 そもそも、運転会当日はさまざまなメンバーが車輛を持ち寄る関係から、互換性を鑑みれば自分の車輛だけ総ケーディー化してしまうわけにもいきません。さすれば、デフォルトの朝顔型のまま、運転会において迅速なセッティングや脱線等のトラブル復旧ができるような工夫が必要になってきます。
 
 そこで、コ型ピンを使う方式を活かしたまま、その欠点をカバーする対策をいくつか考えてみました。しばしご高覧をば。


【コ型ピン方式の、運転時における問題点】

まず、左上の写真の連結部に注目して下さい。HOナローを嗜むモデラーにはおなじみ?の、コ型ピンによる朝顔型カプラーの連結状態です。
 これで運転する場合、動力車先頭に牽引する分にはまだよいのですが、推進運転や、強い前後衝動が生じた場合、ピンの座屈現象が生じ、最悪の場合、右上の写真のように脱線してしまいます。
 機関車とかガソリンカーに客貨車が1輛だけブラ下がっているような編成ならさておき、輛数の多い運材車の編成では復旧の手間もバカになりません。


●対処その1●
ピンを新製する

上記の問題点を克服するには、まず推進時においてバッファー同士の遊間をゼロになるようにすることです。これだけで脱線の発生率はかなり低減されます。
 そのために、ピンを新たに作ってみました。製品付属のものよりも細い線材を用い、かつ間隔を狭めるのがポイントです。
 上写真左は、モデルワーゲンの運材車に付属のピンでφ0.6・間隔約3.5mm。
 上写真右が、新製したピンで、φ0.4・間隔約3mmとしています。

 下の写真が、新製したピンによる連結状態です。
 目論見通りバッファー遊間はゼロにできています。しかし間隔をギチギチにしてしまうとカーブの通過時などに問題が出ますので、ピンの太さを細くしてやることで、動作に多少のアソビも持たせているわけです。

しかし、これでも依然残る問題点があります。
 連結されている状態はよいとしても、連結・解決の際にピンセット等の道具or器用な手先(^^;)が必要なこと・作業時におけるピンの紛失の恐れがあることは所詮まぬがれない…のです。
 さらに付け加えるとすれば、同じ寸法のピンを大量に作るのは、なかなか面倒だったりするわけで…(^^;)



●対処その2●
ピンをカプラーに挿した状態で接着固定してしまう

             
               

そこで考えた、乱暴にして簡単な解決策がこれ。製品付属のピンを片方のカプラーに差し込んだ状態で接着してしまうことです。
 こうすると、ピンの座屈が生じませんから、推進時も安定するばかりでなく、連結作業時に工具も必要としませんし、ピンの紛失の心配もありません。ぜひダマサレたと思ってやってみて下さい(^^)。

 デメリットは、車輛の連結方向が限られることです。そのため、編成を組むときの車輛の向きにこだわられる場合は、事前にその検証が必要ですね。
 あと、ピンを接着してしまうことに心理的抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなときはゴム系接着剤(ボンドG17、セメダインコンタクト等)を使うことをお奨めします。あとで外したくなったときには、プラ塗料用のシンナーを使って簡単に除去できます。


●対処その2‐2●
逆転の発想・ピンを逆さまに接着

最後にお目にかけるのは、“対処その2”の応用編。
 どうせピンを固着してしまうのなら、逆さに差しこんでしまうのはどうか、ということです(上の写真の場合、黒く塗装済の台車の方にピンを接着してあります)。
この方法だと、“対処その2”にくらべ、上から見たときの見栄えが良くなるというメリットがあります。
 ただ、注意が必要なのは、写真でお目にかけている、モデルワーゲン製のエアホースが付くタイプの運材台車の場合。
 下の写真の矢印部のように、ピンを固着しない側の連結面のエアホースを、ピンの孔に干渉しないように曲げておくのを忘れないようにして下さい。


<補遺>
【kondouraさんのアイデア】

KMCのメンバーでもあるkondouraさんから、さっそく改良案をいただきました。
実物通りの形状のロスト製カプラーにおいて、ピンを逆さに挿す場合
作業がしやすいように、カプラーの下の方の孔を大きめに拡げる、というものです。


図:kondouraさん

下から挿す場合、目視で孔の位置が掴めずピンが挿しづらいため
その苦労を軽減するのが主眼です。例のMW製運材20組(下写真)の一部に
施工されたものを、KMCの例会時に見せていただきましたが、
単純な加工ながら確かに作業性が向上します。


 
 

【後日談】 
(update:2005.10.23)

●その後、このコ型ピン式カプラーの工夫に関する話を、当頁の内容をベースに
とれいん』誌2004年10月号(No.358)『カルタゴ・サロン』に掲載しています。
買ってやって下さい(^^;)

●さらにその後、KMCどんぐりさんがワンタッチで連解結できる朝顔用の先割れ式リンクを作成
その利便性がKMC内でマトゥリになったことから、モデルワーゲンから量産化改良の上発売されるに到りました。
現在はどんぐり式リンクはKMCの制式カプラーとして八面六臂の活躍をしております(^^)。
 

↓おまけ:どんぐり式リンクの量産試作品とその耐久テスト風景



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