サブロク未満写真館

土工“酒井”の角度



これからご紹介するのは、最近さる知人から写真を見せていただいて、初めてその存在を知ったナローの内燃機関車である。写真を見るかぎりでは、4〜5t級の鋳物台枠機で、台枠には“SAKAI..WORKS”、そして軸受とラジエーター上舟には“SKW”の銘が陽刻されているのだが、そのボディはイエローに彩られ、しかも現車は関東地方のとある建設会社で今もなお保管されているのだという。すなわち、正真正銘の“土工”に従事したと思われる機体なのだ。
“SAKAI.WORKS”―酒井工作所のナロー内燃機は、各地の森林鉄道ではひじょうに馴染み深いが、林鉄以外の事例となると、立山砂防や神岡鉱山など数えるほどしか思い浮かばない。さらに“土工”用についていえば、北海道の客土工事のものくらいしか写真を見たことがない。存在が公にされている現存機体にしても、林鉄と立山砂防のものがほとんどであったりする。
同社の納入台帳まで調べたりしたことがあるわけではないから、しょせんイメージというか思い込みの域は出ないのだが、少なくとも個人的には、“土工の酒井”は、思わず色目をつかわずにはいられない存在なのだ。
それが、今でも姿を留めてひっそりと眠っている―これはぜひとも見に行くしかない!と思い立ち、蒸し暑い梅雨空のある日、カメラと巻尺を携えてこの機関車がいる場所へと赴いたのだった。はたして、その実態やいかに?

全 体

資材が立てかけられたりしていて見づらいが、ごらんの通り見てくれは
典型的なナローの産業用内燃機である。重量は4tクラスか。


 


 


“酒井”の証

ラジエーターの上舟、台枠、そして軸受には酒井製の証である陽刻が
燦然と?浮き上がる。このクラスの酒井は林鉄用しか見たことのない身にとって、
黄色い泥まみれのボディにSKWの刻印、というのは、違和感もあるが新鮮でもある。


 


上回り

いっぽう、上回りを観察すると、別の違和感を感じざるを得ない。
キャブの造作なぞ、あきらかに加藤製の趣だったりするからだ。

▲排気管は失われ台座のみ残る。           

 


エンジンルーム内

そしてエンジンルームを覗くと・・・積まれていたのはなんと、加藤製作所製のガソリンエンジンであった。
形式K-1、製造番号1317、ボア×ストローク=4-1/4"×5"(108mm×127mm)であることが判る。
この手の機関車が積むエンジンは大抵OEMで、メーカーも舶来・国産問わず千差万別であるが、
加藤製作所はかつて自前のエンジンも用意していた時期があった。
それにしても、加藤製のエンジン自体今となってはめずらしいのではなかろうか。


 






  燃料タンク〜砂箱廻りのようす。
 


▲エンジンのみならず、砂箱もKST・・・すなわち加藤製!     



バッテリーの台座


キャブ内


 


 


ひとおおり見てきたが、この手の機関車に詳しい方にはもう説明は不要であろう。
―そう、この機体は酒井と加藤の機関車のパーツを適当に流用して
組み上げたと思われる、いわゆる“ポンタ起こし”だったのである。
したがって、純粋な酒井製のカマではないけれど、こういうポンタ起こしの
現物を見たのは初めてだったので、少なからず興奮をおぼえたことであった。


実測図面(らしきもの)


さいごに、この機関車の存在を教えて下さったKさん、
現地訪問にお付き合いいただいたAさん・Yさん・Sさん、
そして撮影を快諾して下さった所有会社の方に、改めてお礼申し上げます<(_ _)>。

<写真全て2003.6撮影>


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